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What's Up With Watt’s Up With That?

あ、Yahoo!掲示板でSSFS氏がこのブログについて書いてくれてる。
どうも、前の記事で「懐疑論のサイトには、残念ながら「玉」は非常に少ない」と書いたことがお気に召さなかった模様。

その上にはRealClimateとWUWTとの記事の"数"の差を示してるけど、
「そういう"数"を比べても仕方が無い」
という内容を読み取れないのが「理解力の乏しさからくる」ということを理解できていないというオマケ付き。

なんつーか、嬉しくなるな。

で、SSFS氏曰く、
WUWTに触れずに懐疑派を語るなんて、この業界ではモグリです

はい、触れています。
海外の懐疑論のレベル
という、昨年6月の記事で、9月の海氷面積の予想を取り上げています。

SSFS氏は、もう少し頑張りましょう。
ついでに言えば、
増田氏が私の質問に満足に答えられない
のではなく、何度説明されても理解できないSSFS氏が
相手にされてない
ことも理解しましょう。(その"理解力"が無いのが問題なんだけどね)

※"業界"って言われても、私は"業"にした覚えはないんですけどね。
SSFS氏には、そのあたりの現実把握力にも問題がありそうです。



まあ、折角ですからWUWTについても少し書きます。
(そういやWUWTもWordpressだったな…)

WUWTの記事の数は非常に多いですが、大半は気象をネタにした「雑談あるいは雑学」です。(それはそれで価値があると思いますが)
また、地球温暖化や気候変動に関する記事も、多くは「大雪の写真」等の「現象の羅列」に止まり、懐疑論というか「論」ですらありません。

懐疑論にしても、単に言葉尻をとらえたモノや「CO2気にするならネットを止めろ」系の馬鹿話が多いですが、有用な記事も幾つかあります。
観測所が正常か調べてみよう
等のプロジェクトは「人気ブログ」ならではのモノでした。
これらのプロジェクトは「あまり関係なかったね」という結果でしたが、問題提起としては価値があったと思います。

日本でも「陽だまり効果」の検証をされた近藤純正氏の労作がありますが、このような地道な検証作業は称賛されてしかるべきだと思います。

ただ、大半の"懐疑論"っぽいモノは「海外の懐疑論のレベル」で書いたように低レベルのモノで、「ん?で、結局何が言いたいの?」という内容の無いような記事も目立ちます。

直近の記事では"The Temperature claims of 2010"なんかがそうですね。

この記事は「2010年が2005年と並び、観測史上最も暑い年であった」というNASAの発表に対しての検証です。


まず、この話の背景ですが、
どうも「1998年が一番暑かった。だから温暖化は止まった」としたい人が多いようです。
この主張自身「今年の冬は寒かった。だから寒冷化している」の同類であり、長期的な視野を欠いたための誤謬です。
また、特に日本では気象庁のデータを見て話す人が多いため「1998年」の懐疑論が多いのですが、世界的には多くのデータセットでそれ以降の年の方が高温になっているとしています。
それでもなお「温暖化は進んでいない」と主張したい人は多いのでしょう。


"The Temperature claims of 2010"に戻ります。
この記事の主旨は、「一時的な高温でその年全体の平均値が上がったのか見てみよう」ということで、それはまあ、妥当でしょう。
そして、HadCRUの記録から、1998年は「観測史上一番暑かった月」が多く、エルニーニョの年は春に高温になる典型例としています。
2010年の記録からも、2010年もエルニーニョによる春の高温があったことを示してもいます。

そして話は進みます。
Met Office Hadcrut、CRU Hadcrut、CRUTem、GISS、NOAAという5つの比較をしています。
一番最後には、各データセットごとの平年差を表にまとめています。

まず、CRUがらみの3つのデータセットでは2010年の順位は落ちます。
この理由は「データが足りないため」という指摘はすでになされていますが、この記事の中ではそれについて言及していません。
ともかく「1番暑かったのではない」という結果が出たので満足なのでしょう。

しかし、NOAAやGISSのデータでは「2010年は1位2位を争う温度が高い年であった」という結論になります。

さて、「温暖化は止まった」としたい懐疑論者はどうするでしょうか?

突如、誤差範囲の話を始めます。
そして、「誤差範囲の間だから、1998年以降は温暖化は進んでいない」と結論を出します。

ここでは、CRUがらみのデータセットの誤差範囲は出てきません。
「1998年が一番暑かった」のを「誤差範囲」にはしたくないのでしょう。

都合のいい時だけ誤差範囲を持ち出して、「年ごとの順位を付けよう」という話の前提すら"ちゃぶ台返し"にしてしまう…
なんつーか、苦笑いしか出てきません。

そして、「他の年と変わらない」ことを強調するために「月ごとのパターン」が出てきます。
2010年はエルニーニョの影響が強く、それを除けば2001~2009年と変わらない
という主張です。
では、1998年はどうでしょう?
1998年の「記録破りの高温」がエルニーニョによるものであったことは前半で示しています。
でも、「1998年はエルニーニョの影響が強く、それを除けば他の年と変わらない」とは主張したくないでしょうね。
実際、主張していません。

HadCRUのデータセットからは
「1998年はエルニーニョのために一番暑かった」一方で「2010年は記録破りの暑い年ではなかった」
と主張できました。
しかし、その一方でGISSのデータセットでは
「2010年はエルニーニョのために一番暑かった」ので「それを除けば平凡な年だった」
と主張するのは整合性が取れません。
そう主張するならば、1998年を含めて各年の"補正"を行うべきです。
そういう補正を行った結果「1998年は特別暑かったわけではない」という研究もすでに出ていますが、この記事では触れていません。

この記事は「温暖化が進行している」ということを否定するために稚拙な詭弁を並べているだけです。

こういうしょーもない話がWUWTでは多いです。
だから、私はWUWTを特に取り上げることはしてきませんでした。
折角の良い仕事もしておきながら、このような瑕が多いので"玉"とは呼べないわけです。
この程度の"懐疑論"が蔓延ることのないように、懐疑論でもしっかりとしたサイトが出来ることを望んでいるわけです。
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サイト

気候変動について関心を持つ人は少なくありません。
そして誰でも手軽に自分の意見を公開できるネット時代の今、古典的なサイトの他に掲示板、Wiki、ブログ、Twitter、SNSなど、様々な形で地球温暖化について議論が交わされてます。

統計を取ってみたわけではないのですが、学術的なサイトや公的なモノを除いて「一般の議論」としてはどうも「懐疑派」の方が数としては多いような気がします。
いわゆる"主流"の方は、あらためて「地球温暖化説は正当である」と主張するまでもなく「IPCCの報告を読みなよ」で終わるため、特にサイトを作る意義を感じないのかもしれません。
懐疑論の方が「今年の冬は寒かった」などの"その場の思いつき"で記事を書けるのに対して、「いや、長期では」等の反論はデータを集めたり過去の論文を調べたりする手間がかかることもあります。
そして、データや理論を正しく解釈できる能力を持つ人は数として少なく、それ相応の仕事をもち忙しいことも多いでしょう。
一方、世の中の大多数にとっては「温暖化の科学はどうなっているのか?」より「それで結局どうなの?」の方が大切です。「テレビの内部構造・原理」よりも「テレビのボタンを押せば番組が映る」ほうが大事なのと同じです。
そして、その大勢にとっては「政治家や科学者の"エリートたち"が"庶民"を騙して金もうけをたくらんでいる」というストーリーの方が「ウケる」し「納得がいく」でしょう。
どうしてもお手軽な懐疑論の方が多数を占めることになります。

ただ、それがポピュリズムにまで波及してしまうと「雰囲気で政権交代→事業仕分けで科学予算カット」みたいなハメになり、将来の道を誤ることになります。
"大衆"の意見がどうであれ"科学的事実"は変わりません。
民主主義の社会においては、例え表面的に現れる"数"は少なくとも、判断材料として"内容"が充実しており、正しい情報が大きな影響力を持つようにしなければならないと、私は考えています。

そういう点で議論の内容をみると玉石混交ですね。
懐疑論のサイトには、残念ながら「玉」は非常に少ないようです。大半が基本的な勘違い、言語能力・理解力の乏しさからくる誤解です。
主流のサイトとしては、国内では"地球温暖化懐疑論批判"や"ココが知りたい温暖化"が良くまとまっていますが、残念ながら議論をする場ではなく、懐疑的な「さらに、ココが知りたい」という個別の質問には答えられず、「言いっぱなし」のような印象を持たれるかもしれません。
コメントにより議論を深められるサイトとしては、"RealClimate"や"Skeptical Science"がありますが、残念ながら英語です。
一部日本語訳がありますが、どうしても情報量として格差が生じます。

日本の国内でも"主流"のブログは多くあり、中でも"気候変動・千夜一夜"は複数の気候学関連の研究者によるもので、さすがな出来になっています。
しかし、ブログという形式上、資料を蓄積して利用するという仕組みにはなっていません。
そのためでしょうか、広場・工房・教室など議論・資料の蓄積・勉強会の機能を含めた"気候の門"というサイトを新たに設置されたようです。
「気候変動を学ぶため、専門外の人にも開かれた"門"」としての名称に加えて英語名が懐疑論ホイホイになっているこのセンス、さっそく、SSFSさんが宣伝をしてくれています。
現在、中立的な立場を保つためにモデレーターを募集されているようです。
このサイトだけにとどまらず、今後、分かりやすい図やグラフなどの資料が揃えば他所のブログでもそれを元にした質の高い議論が可能になるでしょう。
多くの人に支えられて、現在は散発的なものとなっている日本における気候変動の議論のまとめになってくれることを望みます。





<以下、どうでもいい愚痴・つぶやき>
…私も昨年、(もっと低いレベルのところで)「懐疑派は懐疑派で、主流派は主流派で、お互いの意見をまとめて議論できる」サイトを作る、と考えたわけですが、この前、Drupalのメジャーバージョンアップでドツボにはまりました。
多用していたサードパーティのモジュールが未対応っていうか音信不通だったり、テーマの構造が変わったらしいし、いやもう…PHPを使えるわけでは無いので、こういうときは何も出来ない。他力本願で環境が揃うまで半年待ちかなあ…
SSFSさんにも「有言不実行」と言われる始末。
反省してます。いやもう、公私ともども最近いろいろ反省しまくり。

Drupalはコンテンツの扱いが統一されていて扱いが楽だったり、色々とフレキシブルで個人的には好きなCMCなんだけど…
今ではWordpressでも大概の事は出来るようになっているし、サイトのメンテナンスは楽だなあ。
そもそもWordpressのようにアップデートを簡単にするためにDrupal7を導入しようとしたらこの有様ですよ、と。
やっぱりWordpressかなあ…テーマの改造も簡単だし、プラグインを調べてみようかなあ…

今更ながら「温室効果」―――色んなものを端折って

温暖化の懐疑論で根強く残っているのが
CO2の温室効果は飽和している
という説のようです。
そこで、もう一度「温室効果とは」というところから始めたいと思います。


まず、いわゆる「無放射緩和過程があるから放射しない」という説は、
「吸収-再放射」で何を問題としているのか分かっていないんじゃないかと思います。

対流圏のような大気が「濃い」状態では、ある分子が電磁波を吸収して励起しても、そのエネルギーはすぐに他の分子に移動してしまいます。
したがって、その分子が吸収した電磁波のエネルギーをそのまま使って、同じ分子から放射が行われる、ということはまず起きません。
誰もそんな放射メカニズムを主張してません

大気からの"放射の源"は「熱放射」です。
温室効果はよく「地表からの輻射を大気が照り返す」ように図示されていますが、「大地からの輻射」が無くても大気が熱を持っているかぎり、「大気からの放射」は起こります
そして、その放射はCO2や水蒸気など、赤外線を吸収したり放射したりする(赤外活性)分子から特に効率よく放射され、地表を暖めるわけです。

実際に、大気からの赤外線の放射は観測されており、「対流圏で大気が赤外線を放射しない」という説は明確な間違いです。

大気はこうして自身の温度に応じて赤外線を放射するわけですが、どんな波長の赤外線でも放射できるわけではありません。
大気中の分子はその種類に応じて決まった振動をします。そして、その振動に応じて赤外線を放射するのです。

そして、「分子が振動して赤外線が放射される」のと対応して「赤外線を吸収して分子が振動する」ことも起こります。
赤外線は電磁"波"なので、板を揺らせば波が生じ、波が板に当たれば板が揺れる、という関係になぞらえることができます。

こうして、大気中の分子は決まった波長の赤外線を吸収したり放射したりしています。
温度が一定であれば、吸収した赤外線と放射する赤外線の量も同じになります。
これが「赤外線の吸収-再放射」と言われているメカニズムです。



では次に、「放射はするが、その効果は飽和している」という説についてはどうでしょう?

この説の根拠とされるのは「大気中のCO2の赤外吸収は飽和している」というものです。
確かに人工衛星から地球を見ても、地表付近から出た赤外線のうち、CO2の吸収帯では上空に届いていません

しかし、より短距離では赤外線は届きます

現在の大気で地表から100mの高さまで赤外線が届くとします。将来CO2が増えて、この高さが半分になったとしましょう。
これは、「地面から放射された赤外線のエネルギーが半分の大気で吸収されて熱に変わる」ということです。
地表近くの大気は赤外線によってより強く暖められることになり、地表付近では温度は上がります

Fig1.jpg

つまり、「温室効果が飽和するか」ということは「宇宙までの長い距離に届くか」ということとは関係ありません。
「(我々が生活する)地表近くの大気に、どれだけエネルギーが集まるか」の問題だからです。
そして、これは飽和しません。「赤外線が吸収される高さ」が低くなり、より高密度なエネルギーで地表が暖まるわけです。



さらに言えば、「どこまで温度が上がるか」も考えなければなりません。
先ほど「100mまでの高さまで届いていた赤外線が、その半分の高さまでしか届かなくなった」という例を出しました。
しかし、降り注ぐ太陽からのエネルギーとバランスをとるために「届かなくなった」では困るわけです。
太陽からのエネルギーと同じだけのエネルギーを逃がさないと、その場所では温度が上がり続けることになります。

地面と地表付近の大気が暖まることは先ほど書きました。
この暖まった地面と大気からより強い赤外線が出て、赤外線が届かなくなった上の方まで赤外線が届くようになるわけです。
これで上の方の大気も暖められ、これまでと同じだけの赤外線を放射して太陽からのエネルギーとのバランスを取ることができるようになりました。

いや、ちょっと待ってください。
CO2が増えたことで「赤外線が届きにくくなった」のは「100mの下半分」だけではありません。
「100mの上半分」も、さらにその上の大気も、CO2が増えています。
大気は「赤外線が届きにくくなった」分を補うために、それだけ温度が高くなる必要があるわけです。
結局のところ、赤外線が届きにくくなると、大気全体も暖まります

Fig2.jpg



もう一つ、「赤外線が届きにくくなった」ことを補う手段があります。
対流によって上空まで熱を運ぶ」ということです。

地表で暖められた空気は赤外線を放射することによって冷えていきます。
もし対流が起きなかったら、上空に行くに従ってより速く温度が低下するでしょう。
現在の大気でも、対流によって上空まで運ばれる熱により、大気はかなり上空まで暖まっています。

そして、CO2が増えて強まった温室効果により大気の下層に熱が溜まり、温度勾配が強まると、それを解消するために対流が強まります

この強まった対流により、大気の下の方は冷え、上の方は(下の方の温度がそれほど上がらなくても)エネルギーのバランスが取れるところまで温度が上がるわけです。



ただし、一方で「CO2が増えることによる放射冷却の強化」も考えるべきでしょう。

熱い地面から熱を受け取って暖まるのと、冷たい宇宙に熱を放出して冷えるのは、ちょうど逆の関係です。
CO2が増えると、地表に近いほど暖まりやすくなり、宇宙に近いほど冷えやすくなるわけです。

つまり、CO2が増えると上空はより寒くなります

ただし、この「より寒くなる」のは成層圏あたりまで行っての話です。
宇宙から見て地上の赤外線は届かない」のですから、放射冷却は上空限定なのです。

「対流によって下からの熱が運ばれる」対流圏では収支は概ねプラスになり、我々の体感する「気温」には、放射冷却による寒冷化は影響しません。

これらを端的にあらわしたのが眞鍋氏のグラフですね。
また、人工衛星から地球放射スペクトルを観察した結果も「CO2の宇宙への放射は-50℃位の低温の場所から」ということが分かります。

(下書き中、どこまで端折るか考え中。適当なグラフも入れるべきだなあと思うけど、著作権とかあるしなあ)

ノストラダムスとかタコのパウル君とか

あけましておめでとうございます、という挨拶も気恥ずかしくなるタイミングですが、ともかく2011年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

みなさんはこの年末年始、いかがお過ごしでしたでしょうか?
私は、12月中旬にヨーロッパ方面の出張から帰ってきて、大学で予算の申請など仕事を済ませた後、29日に日本に帰国、家族と山陰に旅行に行って、1月の3日には再び大学で仕事を始めるという慌ただしい年末年始でした。

なんだか今年の冬は行く先々で大雪にニアミスしました…

まず、ヨーロッパの大雪
幸い私の行先は南欧中心だったので大した被害は無かったのですが、パリ行きの便などはキャンセルが多く、空港内には仮眠をとるための簡易ベッドも置かれて何人かが横になっていました。

そして、年末の鳥取の豪雪
カニづくしのパック旅行だったのですが、2日目には雪で交通が乱れ、添乗員さんが
「このまま午後も観光地を巡るか、このまま帰るか、どうしましょう?」
とアンケートを採り、間一髪のところで雪の中の立往生を免れました。

異常気象ですね。被害に遭われた方はお気の毒でした。

このような被害に遭うと「前もってこれが分かっていたら…」と思いたくなります。
実際、大雪に見舞われたイギリスでは「気象庁の予測より(温暖化懐疑論者である)Piers Corbyn氏の予測の方が正しかった」と報道されて、温暖化の懐疑論者にウケているようです。
何せCorbyn氏はあの「地球温暖化詐欺」という映画にも出ていた懐疑論者で、CO2による地球温暖化を否定して「太陽活動から予測を立てている」と主張している人物です。
イギリス気象庁(当然「温暖化論者」です)の予測より彼の予測の方が正しかったならば「やはりCO2より太陽活動だよ」と言いたくなるでしょう。

で、実際の所はどうなんでしょうか?
Corbyn氏に関する英語版Wikipediaをみるに、彼の予想は必ずしもイギリス気象庁の予測に勝っているわけではなさそうです。
2007年には「11月に、イギリスに大嵐が来る」と予測して外し、(一部地域では嵐があった)
2008年には「1月は非常に冷え込む」と予測しましたが、結果は気象庁の予測通り暖かかったということです。

まあ、Wikipediaのことですから、彼に悪意を抱いている誰かが恣意的に「外れた」部分のみを書いているのかもしれません。
念のために、Corbyn氏のサイト結果報告(PDF)を見てみました

わお!2008年の予測のうち86%(42/49)が当たっているそうです。

2008年の冒頭の予測
「アメリカ中西部で3月9-13日ごろに長期の大雪と吹雪があるだろう(85%の信頼度)」
結果「的中」

その「的中した」という証拠としてブログを3つ挙げています。
1つは、リンク切れ
1つは、3月7日の記事で「オハイオ、テネシー、ケンタッキー、ミシシッピとアーカンソーその他の州で嵐の予報が出た」というもの
「7日の夜から8日朝にかけてケンタッキーで雪が積もるだろう」という予測で、すでに6日にはテキサスで雪があったらしいです。
(※この中で中西部なのはオハイオ州だけで、その他は中西部ではありません)
1つは、オハイオで8日に大雪になったという話。日本語のブログでもこの大雪について書いている方がいました。

え~、この時点で私は検証を止めました。
時期も[予測:9-13日、実際:7-8日]、
規模も[予測:長期の、大きな被害をもたらす吹雪、実際:金曜の夜遅くから土曜夜に積もる]、
範囲も[予測にある「アメリカ中西部」12州のうち、雪が降ったのはオハイオ州のみ]、
微妙で、これは私だったら「外れた」とします。

でも、評価としては「的中!」

かなり甘い評価なんじゃないかと。
なんというか、小さいころに流行った「ノストラダムスの大予言」を思い出しました。
関係ない事件でも解釈によって「当たった」としたりするアレです。

こんな感じだったら私も半年先の予測をしてみましょうか?
---------------------------------------------------------
「8月中旬にはかなり気温が上がり、本州のいくつかの地域では記録的な熱波が観測される可能性がある」
「9月下旬には沖縄-九州地方でかなり強い風が吹き、大きな被害が起こるかもしれない」
「この9月の嵐は、本州の太平洋側にも広がる可能性があり、東京でも浸水の被害が発生する可能性がある」

---------------------------------------------------------
この予想、あたるかな?
「アメリカ中西部」という広い範囲ではなく、「日本の本州」とか「沖縄-九州地方」などかなり予測の範囲を絞ってみました。
「8月中旬」としましたが、前後最大1週間は誤差と考えてください。
「記録的な」とか「大きな被害」は、まあ、枕詞のようなものです。どこかで床下浸水でもあれば、それは「大きな被害」です。
当たったら褒めてください。当たらなかったら忘れてください

まあね、Corbyn氏のは予報"ビジネス"ですから。
ある程度のハッタリはセールストークとして許されるでしょう。

では、ビジネス上の売り文句ではなく、科学としてはどうでしょう?

外部の研究者が統計的に調べた結果が論文として出ていました
ここでは、「夏になれば暑くなる」のような「当たり前」で「曖昧な」予測を排除するために「突風」に絞って、当てずっぽうの場合と比較して評価しています。
結果は、44の予測をした中の23が的中し、18が予測されていなかったということです。
つまり、23回の予測が当たり、21回の予測が外れ、18回は見逃してしまった、ということです。
意外に的中率は低いですね。でも、「偶然とは言い切れない」という評価なので、稀な現象の予測が難しいことは分かります。
そしてその論文の著者は、論文の中では「偶然とは言い切れないほど当たっているが、結論にはさらに調査が必要」と述べています。
また、ニュースサイトでは「大部分はグレーゾーン」と述べています。

いちいち「当たった、外れた」と騒がずに、科学的な根拠が不明なモノに対しても冷静にデータを分析して評価を下す態度は科学者として立派ですね。
私も科学者の端くれとして、このような態度は見習いたいものです。
私は気象・気候は全くの専門外ですが、「科学分野で高度な教育を受けた者として」関連情報も調べずにいい加減なニュースを垂れ流すような恥ずかしい真似はしないようにしよう、と思ってこのブログを書いています。

結局のところ、このようなニュースに価値を与えているのは「莫大な予算を使っている気象庁は当てて当然」という思い込みに対して「個人の予想が勝った」という意外性であり、
当たったら大騒ぎ、外れたモノは無視して「全体ではどうなのか」を統計的にいちいち調べることはしないという態度を前提としているわけです。

こういう「意外性」と「統計は無視」によって生まれた「お話」に最近では「タコのパウル君」がありました。

ノストラダムスにしてもパウル君にしても、エンターテイメントとして楽しむ分には良いと思います。
「何百年も前の賢者が人類の行く末を見通していた」
「愛らしいタコが国際的イベントの勝敗を予言して騒動になった」
オモシロイじゃないですか。
純粋に小説のネタとしてもいけたでしょう。

でも、それを科学的な検証を経ずに「当たった当たった、超能力だ」と真面目に騒ぐのはいかがなもんでしょう?
今回の「大雪を当てた」騒ぎも、検証せずに騒ぐ様子はタコのパウル君を真面目に「超能力タコ」と崇め奉るように見えちゃうわけです。

懐疑論者の超絶論法

Yahoo!掲示板でSSFS氏が色々と地球温暖化に対する懐疑論を拾ってきてくれるわけだが、その中で面白かった物を1つ紹介します。
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ニュージーランド国立水圏大気研究所(NIWA)が観測データに謎の補正を加え温暖化を演出していた問題、
NIWAは調査の結果ニュージーランドはほとんど温暖化していなかったと訂正。事実上データ不正を認めた。
http://www.scoop.co.nz/stories/SC1012/S00054/climate-science-coalition-vindicated.htm
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harusantafe氏、SSFS氏によれば、NIWAが「ほとんど温暖化していなかった」と認めたそうです。
確かに「リンク先の記事には」そのようなことが書いてありますが、実際の所どうなんでしょ?

結論から書きますと、NIWAは「温暖化が改めて確認された」と公式サイトで12月16日に発表しています。
「『ほとんど温暖化していなかった』と認めた」というのは事実に反します、というか、事実と逆です。

なんでまた、こんなことになったんでしょう?

この懐疑論の発端は去年の11月にさかのぼります。
懐疑論グループ「NZ Climate Science Coalition」と「Climate Conversation Group(略称CCG)」がニュージーランドの気温の生データを調べてグラフにし、「NIWAの発表と違ってNZではほとんど温暖化は起きていない」と発表(PDF)しました。

NIWAデータ
が実は
懐疑論Gデータ
だったというのだから驚きです。(図はどちらもWattsupのサイトから)

ちょうど世間では「Climategate」で「データのねつ造」が言われており、NIWAもか!という流れを作り出せれば懐疑論として成功でした。
日本でもこのようなグラフを紹介しているサイトやブログが多々見受けられます。

しかし、NIWAは反論します。
「観測点が移動しているのだから、補正をするのは当然だ。その補正は国際的に認められた方法で行っている」
つまり、
NIWA-補正前

NIWA-補正後
と補正したわけです。(図はどちらもNIWA公式サイトから)

※早とちり系懐疑論によく見かけられるのが、「気温の生データをそのまま足して『平均気温』とする」ことです。
しかし、長い年月の間に観測点は移動するものであり、その標高や緯度などを補正するのは当たり前のことです。


しかし、この初歩的なミスを指摘された懐疑論Gは引き下がりません。
「本当に国際的に認められた方法で補正したのか?」
今年の8月には、「これまでの発表を取り下げろ」と訴訟を起こし、意気軒昂です。

そこで、「補正」が果たして妥当なものか、オーストラリア気象局が審査役を引き受けました。
NZのお隣、オセアニアの気候をよく理解しているオーストラリアの機関はまさに適任でしょう。

そしてこの12月16日に、結果が報告されました。
オーストラリア気象局は、NIWAの解析手法を調べ、それを支持する
というのが結論です。
これは幾つかの報道(1,2,3)にもあり、冒頭にあげたようにNIWAの公式サイトでも報告されています。

普通に考えれば、「オーストラリア気象局は『NIWAのデータ補正には問題ない』と認めた」となるでしょう。

しかし、CCGはそう考えませんでした。

CCGの代表でもあり、この懐疑論プロジェクトのスポークスマンでもあるTreadgold氏の発言が件の「NIWAが認めた」になるわけです。
では、彼の話を聞いてみましょう。

「オーストラリア気象局のレポートでは、NIWAの解析について『支持する(support)』と書いており『(正しいと)証明する(prove)』ではない。これは消極的な賛同にすぎない」
※これは、どんな単語を使っても「確認された(confirmed)」ではない、「検証された(verified)」ではないと言えるでしょう。オーストラリア側が「健全である(sound)」と言っている以上、「NIWA側の落ち度はない」という報告であることは明らかです。

「NIWAは『すでに内部にデータは無く、外部の文献を参照している』といってデータを見せない。つまりオリジナルの生データを解析することはできず、補正の正当性は証明されない
※これはCRUのデータねつ造疑惑でも言われたことですが、「生データ」は見ることができるのであり、記事中でもそう書かれています。そもそも懐疑論G自身が昨年末に「生データのグラフ」を出したのは何だったのでしょう?

「今回、NIWAがグラフを修正した。つまり、これまでの補正をしたグラフは嘘だった
※異なる解析法で解析しなおしたために若干の違いは出ていますが、前のグラフとほとんど変わっていません。
NIWA-解析(図はNIWAの公式サイトから)
だからこそ、オーストラリアも「NIWAの解析を支持する」と報告したわけです。ちょっとした違いをもって全否定することはこの手の懐疑論の常とう手段です

前のグラフの補正が使われなくなったのだから、我々が去年出したグラフが正しいことになる」
※NIWAの解析も、オーストラリア気象局の解析もほとんど同じ結果であり、新たな解析結果もCCGのグラフとは異なる「温暖化傾向」を示しています。
そもそも懐疑論G側のグラフは何の再評価もされていません。オーストラリアは「CCGのグラフこそ正しい」と言ったわけではありません。


ものすごい理屈です。
いずれにせよ、このような理屈でCCG代表は「NIWAは間違っていることを認めた。CCGの正しさが証明された」と主張しているわけです。
「阿Q正伝」という小説の主人公「阿Q」はケンカに負けても罵られても自分の都合のよいように脳内論理をくみ上げて「勝った」ことにする特技を持っていましたが、このいわゆる「精神勝利法」が仇となり阿Qは最終的には命を落とすことになるわけです。
革命時代の中国とは違い、現代の科学論争では命までは奪われませんが、このような発表は科学者としては自殺行為です。
多くの懐疑論ブログでは批判的なコメントを無視して「信者」のコメントで盛り上がりを見せるわけですが、CCGやNZ Climate Science Coalitionはどうするんでしょう?
「気候問題を科学的に検証する」グループとしては恥ずかしい間違いですし、ビジネスとしてはあくまで「議論に勝った」ということにしないと不味いのでしょうが、「人生の意義」みたいなものを考えると「むなしくならんか?」と言いたいところではあります。
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